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ダイアログ・イン・サイレンス

執筆者の写真: akikoakiko

ちょうど一年ほど前、友人に案内されて初めて体験したダイアログ・イン・ザ・ダーク

それは、暗闇の中を視覚以外の感覚を使ってさまざまな体験を味わうソーシャルエンターテイメントで、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで世界41カ国以上で開催されています。

昨年の体験の様子の記事が残っているのでよければご覧ください。


昨年末は今年がこんな年になるなんて予想だにしていませんでしたが、今はコロナウィルス感染拡大防止の観点から、密閉された空間で他人と声や手を使ってコミュニケーションをとる「ダーク」は停止中(その代わり、「ダイアログ・イン・ザ・ライト」というプログラムを開催中です)。


そして今回体験してきたのは、「ダイアログ・イン・サイレンス」というプログラム。

こちらは音のない世界で、言葉の壁を超えた対話を楽しむエンターテイメントです。


アテンドしてくださるのは、聴覚障害者の方。

参加者は、音を遮断するヘッドセットを装着し、

音や声を出さず、お互いにコミュニケーションをとる方法を発見していきます。


コミュニケーションは主に、相手の顔の表情やボディーランゲージなどですが、コロナ禍でマスクを着用しているので、相手の表情を読み取るのが特に難しい!

ですが、その分相手の表情や手振りにとても集中します。



「ダーク」同様、プログラムはとてもよく考えられていて、あっという間に90分が経ってしまいます。

是非直接体験していただきたいので詳しい内容は書きませんが、私は本当に感動してしまいました。


というのも、私たちは普段いかに、目の前の相手や状況から目を逸らしているかに気づかされるからです。「サイレンス」では言葉でのコミュニケーションができないので、相手の表情や仕草を取り逃すまいととても集中していたし、その集中力が増せば増すほど、言葉以外のコミュニケーションの可能性を感じます。私はまだ表現力が乏しく、思うように伝えられなくてもどかしくもありましたが、さすがアテンドの方の表現力は本当に素晴らしく、そこに私たち以上に大きなエネルギーが込められているのを感じるのです。


アテンドをしてくださった女性「じんちゃん」は、生まれつき聴覚障害を持っていたそうです。ずっと音のない世界にいるのです。昔、まだ彼女が子どもだった頃はまだ今ほど聴覚障害への理解がなく、つらい思いもたくさん経験してきたと話す彼女が、とても難しいと感じていたことの一つは「自分のアイデンティティを見つけること」だったそう。


でも今日、彼女が私にくれたギフトは、とても大切な気づきでした。言葉以外で相手とコミュニケーションをとることは、目の前の相手に向き合うこと。目を逸らせてはいけないし、ずっと「今、ここ」にいなければいけない。当たり前のことですが、私たちは果たしてそれができているでしょうか?目を背けたり、相手の話を聞きながら何か違うことを考えていたりしていないでしょうか。

それでは、音のない世界ではコミュニケーションができないのです。




最近、何だかファッションのようになっている感が否めない「瞑想」や「マインドフルネス」ですが、目の前の相手に対して「今、ここ」にいることこそ瞑想であり、マインドフルなのではないか、と思ったのです。

逆に、それができていないのに一生懸命座禅を組んだりヨガのプラクティスをすることに、何の意味があるのでしょう。


プログラムの最後に、彼女が身振りと表情と、とても簡単な手話を通じて私たちに伝えてくれたことに、胸がいっぱいになりました。

じんちゃん、当たり前だけれどとても大切な気づきと、心が温まる貴重な時間をどうもありがとうございました。

               (私たちがしている手の形は「I Love You」という手話。)



12/25まで、期間限定でクリスマスバージョンを開催しています。

感染症対策もきちんとしていますし、何よりニューノーマルが求められる現代ならではの「しずかなおしゃべり」を通じて、コミュニケーションについて改めて思う素晴らしいプログラムです。


是非たくさんの方に体験していただきたいと、心から思います。




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