• akiko

20 years as a jazz singer


ビルボードライブ横浜、大阪でのGentle Forest Jazz Bandとのライブから、あっと言う間に3ヶ月。

数年前から、20周年はジェントルのみんなと迎えたい、と思っていました。

せっかく20周年なので、普段のジェントルとのスウィンギンなレパートリーだけではなく、様々なタイプの作品を新たにビッグバンドアレンジにして。

ビルボード・ジャパンのインタビュー記事でも話している通り、私はデビューしてからずっと「ジャズ・シンガー」と呼ばれるのがすごくすごく嫌でした。ジャズに関わる方々で素敵な人は今も昔ももちろんたくさんいますが、もっとざっくりと、当時の保守的な業界やリスナーの志向、「ジャズ・シンガー」というものに与えられたイメージ、そんなぼんやりとした得体の知れない敵と、一人で勝手に戦っていたように思います。

今回、初めてのビッグバンドアレンジで歌った「So Tired」(『Mood Indigo』2004)というボビー・ティモンズの曲につけた歌詞は、そんな私の反抗心の現れでした。



"They don't know what I've been going through

What's going on inside of me, insanity

Drive me crazy and to tell the truth

I'm getting sick and tired of all the things you say


Too much pride and not a single one of you

Is able to live in reality

You're just lazy getting nothing done

I'm getting sick and tired of all the games you play


I know I'm gonna make it keeping the faith

I'm sure that with my angel I'm O.K.

When I'm down he will come around

I'll be safe and sound

But they only making trouble


Learn the alphabet you need some help

You gatta get on out my time is quality

Check yourself before you wreck yourself

I'm getting sick and tired go to the park and play"

"私が今までどんな経験をして、内に何を秘めているのか全然知らないくせに

正直に言うとね、あんたたちの言ってること、本当にうんざりなの



プライドばっかり高くて誰一人、現実には生きられないくせにね

文句ばかりで結局何一つ出来やしない

あんたたちのゲームには、付き合ってられないわ



アルファベットから勉強し直したら?

邪魔しないでよ、私の時間は貴重なの

身の程を知ることね

もううんざり、公園に行って遊んでらっしゃいな"

「ジャズ・シンガーたるもの」とか「そんなのジャズじゃない」とかみんな言うけれど、

そもそも「ジャズ」って何なのか、ずっと自分に問い続けてきた長年のテーマに区切りをつけたのが、2008年に出した『What’ Jazz?』というアルバムでした。『STYLE』と『SPIRIT』と2枚連続作品で、STYLEは私の好きなジャズのスタイル(つまり、20~50年代くらいのジャズ)、SPIRITのほうは文字通り、スピリットとしてのスタイルに囚われないジャズの形を表現しています。

アルバムのアレンジとは違いますが、去年キーボーディスト/シンセシストの坪口昌恭さんと作った映像作品で「What’s Jazz?」という曲を演奏しています。これが私なりに出した答えでした。字幕も付けたのでよければ聴いてみてください。

(10:35あたりから)


そして、この『What’ Jazz?-STYLE』に収録したオリジナル「Jazz~Introducing “How High The Moon”」という曲を、この20周年で是非ジェントルに演奏してもらいたい、とずっと思っていました。この曲は私にとって特別で、とても大切な曲です。

"ジャズには素晴らしい曲がたくさんあってね

もうずっと昔に作られた曲なのに輝きを失わず

今でもキラキラ輝いてるのよ"

「How High The Moon」というスタンダード・ナンバーを色々な人が歌ったり演奏しているのを紹介していくというテーマで作った曲です。

「ジャズってかっこいいでしょ?こんなに素敵なのよ」って、胸を張って言えるようになるまでに何年もかかりましたが、この曲を歌う時はいつも、自分で作った歌詞ながら、胸がいっぱいになってしまいます。

"デューク・エリントンも、ソニー・ロリンズも

バド・パウエルも、チェット・ベイカーも

ジャズ・ジャイアント達が愛したこの曲を、

今から私のバンドがとても素敵に演奏してみせるから、

どうか、聴いてちょうだい"



私はずっと「akiko」という、言わばピン芸人(笑)でやってきたわけで、

様々なタイプの音楽を、様々なミュージシャンと演奏してきましたが、それはいわゆる「バンド」ではありません。

だからいつでも自分の発信する音楽には責任を持たないといけないし、それについてどんな言い訳もできないし、誰かが守ってくれるものでもありません。

でも私たちはステージで一緒に音を奏でている間、それが例え初めて出会って初めて演奏した人だとしても、ひとつの音楽を作るひとつの「バンド」として存在しているわけです。

ジャズミュージシャン、とひとくくりに言っても、色々なタイプのミュージシャンがいます。

それぞれの個性や、得意不得意もあります。

レコーディングにしてもライブにしても、できるだけ一緒に演奏する人の秀でている部分が引き立つように内容を考えますが、それにしても本当に人それぞれ、たくさんのスタイルがあるな、といつも思います。

自分の描くイメージを形作っていくことの大切さと同時に、思いがけない違いをどれだけ楽しめるか、ということも常に心がけています。

多様性が叫ばれる今日この頃ですが、音楽はそれを最もたやすく、そして美しく実現してくれる手段だと思うのです。

今年は8月までほとんどライブをしていなかったこともあり、コロナ感染が急拡大する中ステージに立つ感覚は、長年活動してきた中でも初めて体験するものでした。

歓声もダメ、一緒に歌うのもダメ、立ち上がって踊るのもダメ、これまでのライブのようなわかりやすい手応えがない中、戸惑いもあるし、もどかしいのはもちろんなのですが、それでも「こんな中、来てくれたんだなぁ」と温かい気持ちになり、客席をみてもステージの上のメンバーの顔を見ても、泣きそうになる瞬間が何度となくありました。

行きたいけど諦めた方、当日になって来られなかった方、来ない選択をされた方からもたくさんのメッセージをいただきました。そして対策を徹底されていらしてくださった方にも、それぞれの決断と想いがあると思います。

会場のみなさんは本当に拍手だけで気持ちを伝えてくれたし、声にできない想いに、胸が熱くなりました。

ビルボードのスタッフさんは開場前、本当に念入りに、みなさんに見せたくなるくらい丁寧に、除菌、消毒作業をされていました。最も感染者が増えた8月中旬から9月頭にかけて、あんな状況下でも開催できたのはやはりビルボードという場所だったからこそだと思うし、準備や宣伝でお世話になったスタッフの方々を始め、店内のスタッフ、そして表にでることのない裏方のスタッフさんも含め、すべてのビルボードのみなさんに感謝の気持ちを捧げます。

"That’s the way he sings it, oh so cute he can be, and so funny as well

His humor always shows us “Jazz” can be so much much more fun than you think"

"キュートでおかしくて、

そのユーモアは「ジャズはあなた達が思うより、もっともっと、ずっと楽しいものなんだ」って教えてくれる"

そして、大好きなジェントルフォレストジャズバンド。

さきほどの『Jazz~introducing』の歌詞の中で、スリム・ゲイラードというシンガーについて書いたくだりですが、

ジェントルは私にとって、まさしくそんなバンドです。

上手であることや、難しいことができることよりももっと大切なものを持っているビッグバンド。

ビッグバンドである意味があるビッグバンド。

彼らが一緒に20周年を迎えてくれて、とても幸せでした。

ジェントルのみんな、心から、どうもありがとう。


感染状況もだいぶ落ち着いてきました。

迷いもありましたが、今年の12月25日にはパークハイアットでクリスマスライブの開催を決めました。

コロナ禍を踏まえて、過去開催してきたハイアットクリスマスとスタイルや内容は変えざるを得ない部分もありますが、

いらしてくださった方を絶対に楽しませる自信があります。

是非、20周年の記念すべきクリスマスを、一緒にお祝いしてください。

詳しくはこちらから



デビューから20年、音楽を取り巻く環境はだいぶ変わりました。

そしてこの数十年で、音楽メディアもレコードという形態からカセットテープ、CD、データと移り変わってきました。

レコードで音楽を聴くのは、これまでもこの先も最もお気に入りの音楽の楽しみ方ですが、

それでもこの時代の流れに抗っているわけでもなく、今の時代だからできるようになったことに目を向けています。


ただいま、10ヶ月連続でデジタルシングルを配信中です。

ジャズというカテゴリーを超えて、たくさんの才能豊かなサウンドクリエイター達とコラボレーションを展開しています。

私のこれまでの、そしてこれからの、個々の音楽スタイルはてんでばらばらのように見えるかもしれませんが、自分の中では完全に繋がっているものです。

誰にも何にもとらわれることなく、これからも自由な表現を続けて行きたいと思います。




That's why I sing as I sing today

And I'll be singing all I feel that's Jazz